産業用CTスキャナは、X線を使って部品や製品の内部を、壊さずに3次元で見るための装置です。医療の現場で使われるCTと同じ原理で、対象物の中にあるボイド(気孔)やクラック、異物、組み付けの状態、外からは測れない内部の形状や寸法を確認できます。
この記事では、CTの仕組みと分かること、従来の検査との違い、CTでは確認しにくいこと、そして検査を外注する場合と自社で行う場合の違いを順に説明します。
X線CTの仕組み
X線は物体を通り抜けるとき、材質や厚みに応じて弱まります。X線を当てて反対側の検出器で受けると、弱まり方の違いが濃淡の画像になります。これが一般的なX線透過検査の画像で、奥行き方向の情報はすべて重なって写ります。
CTでは、対象物を少しずつ回転させながら、数百から数千枚の透過画像を撮影します。それらを計算で組み合わせる「再構成」によって、対象物の内部を3次元のデータとして復元します。
データは、ボクセルと呼ばれる小さな立方体の集まりです。1つ1つのボクセルが、その位置でX線がどれだけ弱まったかを濃淡の値として持っています。密度の高い部分は明るく、空洞は暗く表示されるため、内部の欠陥や材料の境目を立体的に読み取れます。好きな位置で断面を切り出したり、欠陥だけを色分けして表示したりすることもできます。
ボクセル1つの大きさは、どこまで細かく見えるかの目安になります。装置の仕様に分解能が「○○μm」と書かれている場合、多くはこのボクセルの大きさを基準にしています。ただし、実際に見分けられる欠陥の大きさは、材質や撮影条件によって変わります。
医療用CTは人の周りを装置が回りますが、産業用CTは多くの場合、装置は固定したまま、対象物を載せた台を回します。人体への被ばくを考える必要がないぶん、X線の条件や撮影時間を部品に合わせて設定でき、マイクロメートル単位の細かな構造まで確認できます。
CTで分かること
- 内部の欠陥:鋳造品や樹脂成形品のボイド(巣)、クラック、異物の混入
- 組み立ての状態:部品の位置ずれ、はめあいや隙間、コネクタやはんだの状態
- 内部の形状と寸法:外から測れない肉厚、穴の位置、内部の流路
- 設計データとの比較:スキャンしたデータをCADと重ね、形状のずれを色分けで確認
- 不具合の原因調査:故障品を分解せずに調べ、どこで何が起きたかを確かめる
いずれも、切断すれば見えても、切断した面の情報しか残らなかったものです。CTなら同じ部品を何度でも撮り直せるため、良品と不良品を並べて比べたり、条件を変えた試作品どうしを比較したりすることにも向いています。
用途としては、鋳造品や樹脂成形品の品質確認、電子部品や電池の内部確認、金属と樹脂を組み合わせた製品の組み付け確認などが代表的です。
従来の検査との違い
- 切断検査(断面観察):内部を直接見られますが、対象物は壊れ、確認できるのは切った面だけです。見たい箇所を外すと、別の部品でやり直すことになります
- X線透過検査(2D):短時間で撮影できますが、奥行き方向の情報が重なるため、欠陥がどの深さにあるかや、立体的な形は分かりにくくなります
- 超音波探傷:内部欠陥を検出できますが、形状が複雑な部品や、欠陥の位置や立体的な形を捉えることは得意ではありません
- 三次元測定機・3Dスキャナ:外形は高い精度で測れますが、内部の形状には届きません
CTは「内部が見える」「3次元で分かる」「壊さない」を、1回の撮影でまとめて満たせる方法です。ただし、どの場面でもCTが最適というわけではありません。大量の製品を短時間で見たい場合は2DのX線検査、外形の精度を突き詰めたい場合は三次元測定機のほうが向いていることもあります。
CTでは確認しにくいこと
- 密度が高く厚い対象:鉄鋼などの重い金属や大きな部品はX線が通りにくく、出力の高い装置が必要になります
- 大きさと細かさの両立:対象物をX線源に近づけるほど拡大して細かく見られますが、そのぶん一度に写せる範囲は狭くなります。大きな部品の全体を、細かな分解能で撮ることは難しくなります
- アーチファクト:金属と樹脂が混ざった部品などでは、本来はない筋やむらが画像に現れることがあります
- 撮影と解析の時間:条件によっては1回の撮影に数十分から数時間かかり、データの容量も大きくなります
- 外観の情報:表面の色や質感は分からないため、外観の検査は別の方法で行います
これらは、装置の性能や撮影条件である程度補えます。見たいものの大きさと、対象物の材質・大きさの組み合わせで向き不向きが決まる、と考えると整理しやすくなります。
検査を外注する場合と自社で行う場合の違い
CT検査には、受託検査会社や装置メーカーのラボに依頼する方法(外注)と、自社に装置を置く方法(内製)があります。
外注の利点は、装置を持たずに、専門の技術者の知見を借りられることです。検査の頻度が低い、対象が限られている、という場合には合理的な選択です。一方で、依頼から結果を受け取るまでに待ち時間があり、条件を変えて撮り直すたびに依頼と費用が発生します。そのため、確かめたい試作の回数そのものを絞ってしまいがちです。試作品や開発中の部品を社外に預けることになるので、機密の扱いについて事前の取り決めも必要です。
内製の利点は、思い立ったときにすぐ撮れることです。試作のたびに内部を確認したり、良品と不良品を同じ条件で繰り返し比べたりできます。撮影データと解析の条件が社内に残るので、後から見直したり、関係者と共有したりもしやすくなります。撮影と解析を繰り返すうちに、どの条件で何が見えるかという知見が、担当者と組織にたまっていく点も見逃せません。
これまでは、装置が大きく高価なうえ、専用の部屋や電源工事、専任の技術者が必要だったことが内製の壁でした。近年は、設置の負担が小さく、設計・品質部門が自分たちで扱える装置も出てきています。
導入を検討するときに確認したいこと
- 対象物:材質、大きさ、重さ、1回に見たい数
- 見たいもの:どのくらいの大きさの欠陥や形状を確認したいか(必要な分解能)
- 頻度と体制:どのくらいの頻度で撮るか、撮影と解析を誰が担うか
- 設置場所:置き場所の広さ、電源、床の強度。X線装置は労働安全衛生法などに基づく届出や管理が必要になるため、事前の確認が欠かせません
- データの扱い:解析ソフトの使い勝手、データの保管場所、社内での共有方法
特に、見たいものの大きさと対象物の大きさの組み合わせは重要です。大きな部品を細かく撮ることは難しいため、部品の全体を見たいのか、特定の箇所を細かく見たいのかをはっきりさせておくと、装置や撮影方法を選びやすくなります。
いちばん確実なのは、実際の部品でサンプル評価を行い、見たいものが見えるかを確かめることです。
Lumafieldの産業用CTスキャナ
Lumafield(ルマフィールド)は、設計・品質部門のエンジニアが自分たちで使うことを想定した産業用CTスキャナと、ブラウザで動く解析ソフトウェアVoyager(ボイジャー)を提供しています。大がかりな設置工事を前提としないため、これまでCTの導入が難しかった部署でも検討しやすい装置です。
製品の詳細は製品・プラットフォームをご覧ください。日本では総代理店の双日が、ご相談からサンプル評価、デモまでを承ります。
